畑と栽培について
低い仕立てリンゴ樹の仕立てには2種類あります。
ひとつは低い仕立て(basse- tige)。
植密度が高く、生産性は高いが、木の寿命が短く、
病害に弱い為、 農薬の使用量も多くなりやすく、
灌漑や不要な芽を摘み取る必要が生じることも多い。
果樹の列の間隔 5.5m、畝間 2.5m で、機械収穫も可能。
収穫量は 30t/ha 前後。
一方の高い仕立て(haute-tige)は機械化が進む前からの
伝統的な仕立てで、植密度は低く、
ha当たりの収量は落ちますが、木がより深くまで
根を延ばすので保水性も高いそうです。
樹間が広いので、その他の動植物用のスペースも
十分にあり、植生も豊かになりやすく、
自然に生態系 のバランスが保たれ、
病害も少ないとシプリアンは話します。
近年では こうした剪定に立ち返る動きが
各地で増える傾向にあるようです。
シプリアンが手入れし収穫を行うリンゴ園も
全て高い仕立てのリンゴの樹で、
枝が四方に広がり、リンゴの樹同士が
10m 離れています。
よって低い仕立てよりも収穫量は少なく、
10t/ha ほど。
2〜3年に一度高い仕立て剪定をする必要があり、
脚立を立てての大仕事。
剪定を怠ると、りんごの実の重さで枝が
折れてしまうそ うです。
収穫:
収穫は両親とともに、熟して地面に落ちたリンゴ
(または軽く木を揺する)を手で拾い集めます。
木箱で 2 週間から1カ月ほど寝かすことで、
さらに熟して成熟した果実特有の香りが
出るのを待ちます。
追熟 が十分にできないと、
出来上がるシードルが物足りないものに
なってしまうのだそうです。
そしてその間に果皮表面の酵母も育っていくのだ、
とシプリアンは話します。
ポワレの場合も同様ですが、
洋ナシの方 がリンゴに比べて
地面に落ちてから果実が持たないため、
2〜3日おきに果樹園を回っては
収穫をする必要 があります。
またシプリアンが手での収穫にこだわるのは、
機械で集めると果実に傷がついてしまい、
木箱に入れての追熟に十分時間をかけられず、
圧搾を急ぐ必要があるためです。
セラーと醸造について:
果樹園はブルターニュ地方各地に点在しており、
昔から植わっていたリンゴの樹なので品種は不明。
実際に食べてみて、個々のリンゴの酸味や苦味、
甘味などを確かめてから収穫する
リンゴ/洋ナシを選びます。
リンゴは収穫後、一定期間(2~4 週間)寝かせてから、
洋ナシは日持ちがしないので収穫日か翌日には破砕、
プレスし、果汁の醗酵が始まります。
また洋ナシは、破砕した果実のもろみをすぐに搾汁せずに、
何時間かそのまま浸漬させておくことで、
収斂性を和らげることができます。
醗酵が進み一定の残糖度に達したら、
濾過をして酵母を取り除き、一次醗酵を停止。
瓶詰後、ボトルを 寝かせて2ヶ月ほど経つと、
残糖とわずかに残った酵母により
瓶内で醗酵が起き、泡が発生します。
醗酵は、野生酵母にまかせてゆっくりと
醗酵を進ませることで、
果実のもつ最大限の香りを引きだされ ます。
「年によって果実のアロマは異なる」という考えと、
「シードルやポワレもグラン・ヴァンのように熟成する」という
考えているため、全てのキュヴェはミレジメ、
生産年が記載されています。
また、亜硫酸 などの醸造添加物は、
瓶詰まで含め使用していません。
果樹の病気:
リンゴや洋ナシも様々な病害、
虫による食害があります。
ガの幼虫などに食べられたり、
カビに侵され 果皮がかさぶたのようになる
リンゴ黒星病という病気があるそうです。
これらの被害を受けた果実や、
近年では水不足により成熟する前に
果実が落ちてしまうこともあるとか。
手作業での収穫は果実の品質を見極め選果する
大事な工程の一つです。
また、シプリアンの管理する高い仕立てでの果樹園では、
低い仕立てでの果樹園に比べて、植密度が圧倒的に低く、
湿気もこもらず病害 が伝播しにくいため、
ビオロジックで許可されている農薬を含め、
殺虫剤や殺菌剤の散布の必要がありま せん。
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