そしてある時、ロンドンへ行った時のこと、
レストランではポルトガルワインが少ないか存在しないか、
であることに驚きとともに、落胆します。
この事実は彼がポルトガルで、
小規模のナチュラルワイン生産者を探すことへの、
直接的な動機となり、次第にこの気持ちは大きくなります。
一方イタリア系移民のホセは、
ブラジルのリオグランデ・ド・スル州(ドミニオ・ヴィカーリ社)で
ワインを造っていました。
当時から畑はもちろんバイオロジック栽培で、
酸化防止剤無添加のワインを造っており、
彼のワインはパリでも、南米の数少ないナチュラルワイン生産者として
ひそかに人気を博していました。
リカルドもホセのことを直接は知らなかったが、
彼のワインを日ごろから愛飲していました。
リカルドが造り手の紹介よりも、自分自身ワイン造りを現実的に考え始めた頃、
彼のプロジェクトに協力したいという、醸造家が現れました。
何を隠そうそれが、ホセであったことは言うまでもありません。
話を進めるうちに、ホセのワインが
リカルドの日ごろから飲んでいるワインの造り手だとわかり、
そこからはとんとん拍子に話は進みます。
現在二人が復興中のエルメジェイラ村の Quinta(キンタ農場)は
1526年にその当時の領主であるペレストレロ家によって
建てられた教会があり、そこに樹齢25年、5haほどのブドウ畑が隣接します。
リカルドとホセは、すぐに彼らの理想とする、ビオロジック栽培へと転換します。
最終目的はナチュラルなアプローチでワインを造り、
化学合成された農薬などの製品や亜硫酸を使わず、
当地トレシュ・ヴェドラシュという土地を表現することだとし
初年度の2018年から、亜硫酸無添加の挑戦的な醸造をしています。
2018年はまだ、醸造所の体はなしておらず、ステンレスタンクは野ざらしでした。
この環境での、亜硫酸無添加での醸造に若干の不安のあったリカルドですが、
すでに10年以上、亜硫酸無添加での醸造の経験のあるホセの仕事と判断は的確でした。
廃墟となった教会と修道院部分を、住居兼醸造所とする予定で、
すこしずつ修繕をしています。
亜硫酸無添加でデリケートの抽出を行った彼らのワインには、
フランスのヴァン・ナチュールらしいともいえる、ジューシーさがあります。
ブレンドして造られることの多いポルトガルのワインですが、
単一品種でのワイン造りにこだわり、様々な醸造を試しています。
「ナチュラルワインへの情熱はロンドン滞在の最後の数年に、
素晴らしいワインを試飲し、そして生産者たちに会ったことの結果です。
リシュボア地域でのワイン造りの決め手となったのは、大洋の強い影響があることで、
熱く乾燥した日であっても、海洋から吹く風がやむことはなく、
そのおかげで強い鉱物感を備えたアルコール度数の低い
フレッシュなワインが出来上がる」とリカルドは話します。
栽培品種:カシュテラン、アリカンテ・ブーシェ、ティンタ・ロリシュ、
アリント、シャルドネ、シュナン・ブランを栽培しています。
ラシーヌさんの資料より
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