サミュエルを除くと、カノ家でワインを自家醸造したのは、19世紀末にまで遡る、
第四代目当主だけでした。その人物は、当地域でもっとも痩せた土地の
一角に接ぎ木されていないAiren(アイレン)を植えて、
家族が楽しめるワインを作ることにしました。
時が過ぎ、カノ家はこの土地に50haほどを所有するに至りました。
うち30haではブドウを栽培し、残りの20haの耕作に適する土地では、
ニンニクやジャガイモ、穀物を 栽培していました。
1988年にサミュエルは大学を中退し、家族の畑で働く決意をしました。
以前は伝統的な土着品種 アイレンのみを栽培していましたが、
サミュエルが加わる頃 までには、テンプラニーリョ、シラー、プチ・ヴェルド、
グラシアーノ、ティント・ヴェラスコ、ヴィジリエガなどの品種も
新たに栽培され始めました。
2006年当時、サミュエルはワイン醸造についてあまり知らなかったにも関わらず、
ワインを自作しようと決心しました。
彼は2000キログラムのシラーを、祖父の中庭(パティオ)で圧搾しました。
こうして作られた1,000本のワインは、醸造所の新しい息吹感じさせるものでした。
サミュエルは祖父の遺した 土地を受け継ぎ、
これまで大量生産型の桶売りワインしか作ってこなかった土地のポテンシャルを
再発見し、土壌や気候、醸造家の手仕事を反映できるワインの生産地へと
転換することを目指しました。
そのワインを飲むと、彼がその目標に向かって正しく進んでいる途中であることが
分かるはずです。
有機栽培の実践、機械に頼らない畑作業、醸造過程での無添加によって、
彼のワインは完全に自然な作りのワインとなっています。
新しい醸造場所に移った後でも彼が最も注意を払っていることは、
祖父の中庭で初めて作った時のように、新鮮なブドウのみを使い、
ブドウを丁寧に扱うことです。
栽培品種:アイレン、モスカテル・デ・グラノ・メヌド、ヴィジリエガ、
テンプラニーリョ、シラー、プチ・ヴェルド、グラシアーノ、
ティント・ヴェラスコ
自社畑面積:30ha
土壌:石灰質粘土及び石灰岩土壌
醸造:収穫されたブドウは小さい箱に入れて醸造所まで運びこまれ、
一晩野外の涼しい場所に置かれたあと、翌日約10℃のタンク内で
野生酵母により自然に醗酵が始まります。
毎日いくらかパンピング・オーバーをくりかえしたあと、
時間をかけてプレスします。
熟成:ワインのタイプによって、異なる大きさの樽を異なる期間、熟成させます。
ビン詰めは濾過、清澄、安定剤無添で行います。
生産量:年間平均約12,000本、ブドウ収穫量約35,000キログラム(2013年)
ラシーヌさんの資料より。
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