当時はまだオーストリアのワイナリーで働きながら
週末にドイツに帰って畑を見るという生活をしていました。
2012年、オーストリアの仕事(研修)を終え同じフランケンで
父の田舎でもあるシュタイガーバルト地区の
Iphofen(イプホーフェン)に引っ越し、
ここと現在の拠点のガームバッハにさらに2つの区画をかります。
その後3年の間に、ガームバッハの周りに
素晴らしい区画Gambacher Kalbenstein
(ガームバッ ヒャー・カルベンシュタイン)を手に出来る縁があり、
それを期にイプホーフェンの畑は手放し2015年春に
ガームバッハへ完全に拠点を移します。
カステラー・キルヒベルクの畑はその間も今も保持したままで。
ガームバッヒャー・カルベンシュタインは
とても珍しくユニークな区画で、急斜面なテラス状の畑で
70年代、80年代に植樹されてからそのままの姿を維 持していて、
まるで数世紀まえの風景を見るように手つかずの印象です。
面積はわずか7.6haのとても小さないわばアペラシオンで
土壌の構成も非常 に興味深く、
この区画の中で石灰土壌と赤砂岩土壌が侵食しあい、
境界はもはやあいまいです。
この2種類の土壌の境界は明確ではなく、
気が遠くなるほどの年月の間、侵食を繰り返してきたため、
お互いに入り乱れ混ざりあっております。
隣り合ったパーセルどうしでも味わいが
全く異なるのはこの2種類の土壌の構成が
ガームバッヒャー・カルベンシュタインの中で
様々な形で複雑に絡みあっているからです。
このパーセルの違いをより理解し感じとるために、
彼はパーセルごとに分けて樽熟成させます。
シュタインテラッセンは樹齢が20〜 40年のパーセル、
GKは赤砂土壌と貝殻石灰岩(ムッシェルカルク)が混ざる
土壌の中でさらに選別したいい土壌で
50年以上の高樹齢のパーセル、
この中にシングルヴィンヤードがいくつかあり、
それぞれ単一キュヴェ(The Longue Tongue、Himmelslücke、
Rosenrain、The Schale)になります。
畑はもちろん無農薬。
ビオロジックを基本にビオディナミの手法も
率先して取り入れています。
ただ、この急斜面のテラスで実践するのは
非常に困難と向き合わねばならず、
多くの時間を畑仕事に割いております。
加えて、この急斜面の畑の中の2haは馬で耕しています。
”品種、ヴィンテージ、土壌のキャラクターをワインの中に映し出す。“
ワイン造りにおいての彼の明確な哲学です。
「シルヴァーナーは果実味を十分体感することは難しいが、
畑と自然に向け合えば土壌とブドウ樹の成長を
より表現することができる、
だからシル ヴァーナーは自分にとって
品種として最も重要だ」といいます。
もちろん、フランケンのティピカルな品種であるのも
重宝する理由の一つだそうです。
先人の多大な努力によって植樹されてきた
ガームバッヒャー・カルベンシュタインのブドウ樹齢は
いま平均で30年〜40年を迎えております。
そしてなん と最も古いものは1931年と1935年に植樹されており、
このパーセルのものは彼のTop Cuveeにのみ使用されます。
彼が持つ畑は合計で約4ha、その70%近くが
ガームバッハの周りにあり、テラス状の急斜面に
30もの細かいパーセルに分かれております。
残りの30% は、先述した
カステラー・キルヒベルク/シュタイガ-バルト地区にあります。
1haあたりで5,000〜6,000の樹が植わっており、
平均収量は36hl/haです。
品種構成はシルヴァーナー 70%、ミュラートゥルガウ15%、
シュプートブルグンダー 8%、リースリング7%です。
(ミュラートゥルガウ、シルヴァーナーのエントリーレベルの
キュヴェの一部で近所の無農薬の農家からの
買いブドウもブレンドされております。)
彼が目指すワインのスタイルは品種の如何に関わらず
エレガントでフレッシュなスタイル。
アルコール度の高さも重要でないため、
収穫は周りの生産 者より早く行います。
言うまでもありませんが手摘みです。
プレスはエントリーレベルから
シュタインテラッセン・レベルまでは旧式の
スクリュープレス機、それ以上のキュヴェは現代式の
バスケットプレス機を使用し4 ~ 6時間かけてゆっくりと絞ります。
ここ数年多くの生産者が使っている
プヌマティック方式プレスは使用していないのも
彼のワイン造りの特徴です。
搾汁後は1日デブルバージュ、
上澄みのきれいなジュースのみを樽に移し、
発酵・マロも樽の中で行いそのまま瓶詰まで約2年、
澱と共に熟成させま す。
この期間、一切ワインには触れずテイスティングですら
数ヶ月に一度行うかどうかだといいます。
亜硫酸塩は瓶詰めまで一切添加せず、
瓶詰め前の 状態を見極めて無添加もしくは
12〜 20ppm(12 ~ 20mg/L) の添加を判断しています。
濾過と清澄は一切行いません。
熟成場所にもこだわりと哲学が生きています。
古いレンガでできたセラーは室温が年間を通して
ワインの熟成に最適で、季節の中で
人間のコントロールなしに自然と微上下するので
ワインが季節を感じ取れると彼は言います。
熟成は必ず樽を使用し(ストッキンジャー /300〜600L)、
そのパーセル毎に分けて仕込みます。
古樽も新樽も使用しますが、ウッディーなニュアンス、
バニラ・テイストをワインに足しこむのが目的ではありません。
彼が目指すエレガントかつフレッシュな
スタイルを表現するために樽が
最も理想的な酸素透過性を実現できるからです。
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