自身の醸造所の設立はヨーロッパも
視野に入ってはいたが、
ココファームでは自社栽培のブドウの他、
日本各地の契約栽培農家からのブドウを
ワインの原料として使っていたので、
ブルースは日本の各地方のブドウから出来るワインの
味わいの特性を大まかにつかんでいた。
そしてかつて岩見沢のブドウを仕込んだ経験があり、
出来上がったワインのスタイルが、
彼の好みどおり芯があって
優雅な骨格を備えていたことから、
家族とともに岩見沢へと移住し
10R ワイナリーを設立する(2009 年)。
ワイン造りの職人に終わらず、
ワインの文化とその社会的な役割に
深い関心があったブルースは、
ワインを自作するかたわら、
北海道のブドウ栽培家たちが
意見交換をしながらワインを造る場と
機会を提供している。
そのコンセプトを最大限に活かすために
10R ワイナリーは受託醸造所という形態をとっており、
毎年複数のブドウ栽培家たちが醸造している。
受託という形ではあるが、
醸造を行うのは栽培家達であり、
ブルース自身は彼らへの助言役に徹している。
ワインへの介入も極力避けるブルースは、
広く積極的なテイスティング経験をもとに、
同じ志を持つ生産者達と交流し、
今や世界的な視野と抜きんでた醸造実績を持つ、
日本を代表する造り手として認められている。
畑と栽培について
ワイナリーとしては 14haの土地を持っていて、
そのうちの3haにブドウを植えており、
有機栽培で管理をしている。
畑は以前から別の作物の農地として
利用されて来ていた場所だったそうで、
年々畑とブドウ樹の状態は向上しており、
出来上がるワインを飲んでも、
“年々馴染んできている”と二人とも実感している。
剪定:「冬の寒く静かな中、鳥たちの声を聞きながら
無心に行うのが、剪定の醍醐味」と話す
ブルースさんと亮子さんだけれど、
岩見沢の場合は収穫が終わるとすぐに、
雪の対策として、ブドウの蔓を
垣根仕立てのワイヤーからはずし
ブドウ樹を地面に寝かせる作業の必要がある。
堆肥も撒けたら撒くけれども、
収穫後の耕作もする時間がない。
そうこうしているうちに雪が降り、
春になって雪が解け剪定できる状態になると、
萌芽の時期はすぐ目前。
なので岩見沢での剪定はとってもあわただしい。
醸造について
醸造所内には樽、ステンレスタンク、
コンクリートタンク、クヴェヴリが並ぶ。
コンクリートタンクはやはり優秀で、
温度の変化がゆっくりであることがよい。
醗酵時の温度上昇もそうだが、
1次醗酵の終わりになるころには、
岩見沢では寒くなりすぎているため、
醗酵が終わりきらないことが多い。
その点コンクリートタンクは、
1次醗酵ピーク時の熱を
少しでも保ってくれているので、
1次醗酵が心配なく終わりやすい。
マセレーション時には通常ブドウは除梗をされる。
特にピノ・ノワールは、全房発酵はさせない。
ツヴァイゲルトは果実味が比較的強いので、
20〜30%全房で行うことがある。
全房にするときは、ソフトさや軽やかさではなく、
骨格を与えることを狙って行う。
マセレーションの間は、醗酵中に1週間に1度、
ピジャージュかルモンタージュをする程度。
可能ならば亜硫酸無添加で瓶詰めをすることも。
受託醸造分も含めると、
例年 50〜60 トンのブドウを仕込むが、
10R ワイナリー所有の畑のブドウから造られる
上幌ワインは、
年産4000〜6000 本程度(2020 年現在)。
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