ツィアアイゼン家は1734年以来この村で生活をしてきた。
元々、家具職人として生計を立てていたハンス・ペーターは
1991年にワイナリーを設立し、本格的なワイン造りを始める。
バーデン南部の石灰岩土壌は大抵三畳紀の貝殻石灰質土壌だが、
ツィアアイゼンの畑はブルゴーニュと
同質のジュラ紀の石灰岩土壌で、
この土壌がドイツ国内で見られるのは唯一この場所だ。
「バーデン南部、ジュラ、そしてブルゴーニュの地層は
連綿と繋がっており、ブルゴーニュは
このバーデンの南端から始まっているとも言える。」
彼はブルゴーニュのピノ・ノワールが大好きだ。
しかし、ブルゴーニュを目指すのではなく、
あくまで一つのお手本とし、自分のスタイルを追求する。
実際彼が用いているのは主に
ドイツやスイスのピノ・ノワールのクローンだ。
ワイナリー設立当時、ハンス・ペーターは
シュペートブルグンダーのみ栽培することを
念頭に置いていたが、妻のエーデルトラウトが
この地方の在来種であるグートエーデルも栽培するよう説得し、
現在では生産するワインの50%をシュペートブルグンダー、
25%をグートエーデルが占めている。
設立後の数年間は生産量が少なく、
地元でしか消費されていなかった彼のワインだが、
2000年以降徐々に頭角を現し、
今ではメインストリームから外れた生産者として
絶大な支持を受けている。
というのも、彼は醸造学校で学んだことがなければ、
他の醸造所で実習したこともない。
手当たり次第好きなワインを飲み、
そのワインがどのように造られているか想像し、
また生産者に話を聞きにいったりもする。
あとは現場で試行錯誤するのみというのが彼の理念だ。
また、彼はVDPに加入していないため、
彼のワインは全てラントヴァインでリリースされる。
「補糖はしないし、添加物も使わない。
単純に造りたいワインを造っているだけさ。
審査委員会は画一化されたワインがいいけど、
僕はそういうワインを造りたくないね」。
2004年に野生酵母のみでワインを造ったところ、
バーデンのシュペートブルグンダーとしては
認められないと審査が通らなかったことをきっかけに、
より独自の路線を歩むことを決心した。
そんな彼のワインは、若い時は比較的大人しい。
時間の経過とともに、内に秘めている偉大さが立ち現れてくる。
多くの生産者が認めるのは、ハンス・ペーターが
フランスでは広く共有されている
「ワインに自分で成長させる時間を与える」という視点を
ドイツに広めたパイオニアだということだ。
野生酵母で発酵を促したり、温度管理等はせず、
人的な介入も最低限に抑えるというアプローチは
ドイツにおいてあまり一般的ではなかった。
またドイツにおけるフランス系品種の
偉大なポテンシャルを証明してみせたのも彼である。
ツィアアイゼンは、ドイツのシュペートブルグンダーと
日常酒の範疇を出ることを知らなかった
グートエーデルの底力を世に知らしめた
アイコン的な存在として今後も
革新的なワインを造り続けていくだろう。
クライン・アバ・ワインさんの資料より
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