生産地
サヴォワ県の県庁所在地シャンベリーから南に10kmほど下ったイゼール県に
隣接する山間にレ・マルシュ(Les Marches)という小さな村がある。
アドリアン・ダカンのドメーヌは、その村の境目、目の前の断崖急斜面からは
サン・タンドレ湖、そして遠くには標高 4000m級のエクラン連峰の
パノラマが見渡せる場所にある。
畑の総面 積は 3.5ha。南東の斜面を中心にApremont(アプルモン)、
Abymes(アビーム)と2つのAOCにまたがり点在する。
サヴォワの気候のベースは、夏が暑く冬は寒さの厳しい大陸性気候だが、
高い山が連なる複雑な地形がそれぞれ独自のミクロクリマを形成する。
ダカンの畑は、標高が350m~400mと高く、
また、まわりが高い山々に囲まれているため、
気温は春夏を通して比較的穏やかで降雨量も多く、
大陸性気候よりも山の天候の影響を受 けやすい。
土壌は、アプルモンとアビーム区域のシンボルでもあるグラニエ山が
太古の昔大海原だったこともあり、13世紀に起きた大規模な崩落によって
化石混じりの石灰岩が水はけの良い粘土層と同化し、
ブドウ栽培にと って最適なテロワールを形成する。
この山間のミクロクリマが織りなすダカンのワインは、酸がフレッシュで、
みずみずしさの中にフィネスとしっかりとした旨味があるのが特徴だ。
歴史
オーナーのアドリアン・ダカンは、
祖父の代から続くブドウ栽培農家の家系で育った。
栽培農家とは言うが、 当時の畑面積は1h と小さく、
実際彼の祖父も父も当時は他の仕事を持ちながら兼業農家として
ブドウをワイン農協に売っていた。
アドリアンは大学を卒業後、製図師として地図の製作会社に勤務する傍ら、
週末や休日を利 用し父親の畑仕事を手伝っていた。
2012年、彼が30歳を迎えた時に父親のジャケールを使って
初めて個人消費 用のワインを仕込み、
それをきっかけにワインの世界にのめり込む。
以降、多くのワイン生産者を訪問し、また醸造や栽培の短期講習に参加しながら
独学でワインづくりを体得していった。
だが、当時彼のつくるワインはま だオフィシャルのリリースはなく、
あくまで個人消費用に留まっていた。
2017年、父親が畑仕事の引退をほのめかしていた頃、
アドリアンは剪定を学ぶ講習会で初めてジャン・イヴ・ペロンと出会った。
ジャン・イヴとその 場で意気投合し、
彼のワインづくりに感銘を受けたアドリアンは、
父親を説得しブドウ販売をワイン農協からジャン・イヴに変え、
それをきっかけに深い交流が始まった。
2018 年、ジャン・イヴをきっかけにヴァンナチュー ルの世界を知った彼は、
父親の引退を引き継ぐかたちで13年間働いた地図の会社を退職し、
新たに2.5haの畑を取得して小さなドメーヌを立ち上げた。
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