ある日、村の外れを散策していた時、
樹から完熟したリンゴがひとつ落ちて来ました。
その樹は一切の農薬や化学肥料を施される事なく育っていた
古い品種のリンゴの樹で、
にも関わらずその実はほとんど利用されることなく
樹になったままになっていました。
そのリンゴの実を手にとったジャックは、
自然や環境を守るという事を
頭で考え続けるよりも、
この利用されずにいる素晴らしいリンゴの実を生かす
具体的な行動を起こす事ができないだろうかと考え、
シードルの生産者となる事を決めたのです。
研究者としての仕事を続けながら
2006年ごろから実験的にシードル造りを始め、
自身の本拠地であるル ムレ村を中心に
半径50kmにわたる範囲で、
完全に自然な栽培をされているリンゴや洋なしの樹を
探しだしては所有者と交渉して
買い付け、シードルの原料としていきます。
買い付けるリンゴや洋なしに関しては、
樹齢の高い古い品種にこだわり、
収穫に際しては果実が樹から自然に落ちるか、
軽く樹を揺するだけで落ちるほど完熟したものだけを収穫します。
そのため同じ樹であっても果実によって熟すスピードが異なる為に、
何度も何度も同じ場所に収穫に通います。しかも一般的なブドウ畑とは異なり、
ひとつの場所に数本しか樹が植えられていないような場所がほとんどで、
これを半径50kmの範囲で繰り返すのですから、途方もない労力です。
こうして収穫されたリンゴや洋なしを圧搾し、
補糖なしで自然酵母の働きのみで醗酵させます。
完熟した果実は酵母の力が強く、
しっかりかつゆっくりと醗酵が進むと言います。
また完熟したリンゴはペクチンの含有量が多く、
その働きで果汁が澄んだものになるとも言います。
これを醸造中にろ過と少量の亜硫酸添加を行い瓶詰め、
瓶内での二次醗酵を経て完成します。
ジャックの目指すシードルのスタイルは、
安定感のあるクリアさと
ナチュラルな味わいのバランスがとれているもの。
いわばシードルの巨匠エリック・ボルドレのような
安定感がありつつもジュリアン・フレモンのような
ナチュラルな魅力を失わないという
非常に難しいハードルを自身に課しています。
そのハードルを多大な労力と丁寧な仕事で越え、
唯一無二とも言える美しさとナチュラルさの
両立したシードルを生み出すことに成功しました。
研究者として頭でっかちな自然保護を唱えるのでなく、
落ちていく実に魂を吹き込んでいくという
具体的な行動によって自然を守り、生かす。
そんなジャックの想いが、ピュアでエレガントな
シードルに実直に表れています。
野村ユニソンさんの資料より
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