畑と栽培について
2020年に最初に借りたモンテアペルティの畑は
キアンティ・コッリ・セネージ内にあり
粘土の多い石灰質土壌。
農薬は銅と硫黄のみの散布で、
絞ったあとのブドウの果皮は、
畑に撒いて肥料とするがそれ以外の肥料は使用せず、
むしろ畑全体の樹勢が強いため不耕起栽培を行うことで、
樹勢を抑えている。
2023年には、サン・ロッコ・ア・ピッリの畑を
新たに0.8ha借りて栽培面積を増やしたが、
初年度はこの年トスカーナを
執拗におそったベト病により、収穫はかなわなかった。
さらに収穫量の少なさから
2023年はブドウも購入したが、
出来ることならば自社畑のブドウだけで
行いたいと考えている。
2024年1月には、一部樹齢50歳以上の古木も植わる
カステルヌオーヴォ・ベラルデンガの2つの区画
(カンピとセスタッチャ)合計1.3haを賃借し、
自身の追い求める高い品質のサンジョヴェーゼの
栽培のために余念がない。
セラーと醸造について
セラーはカステルヌオーヴォ・ベラルデンガ地域に
借りている。
地上階の石造りで手狭だが、断熱性に優れ、
ソムリエとして多くのワインを扱ってきた経験からも、
ワインの熟成、ボトルの保管の環境や
温度については細心の注意を払っている。
理想的には大樽での醸造を目指してはいるが、
醸造環境が整うにはまだ時間がかかるため、
醗酵にはステンレスタンク、
熟成には500Lの木製樽を使用。
「とにもかくにも適切な栽培、
適切な成熟度での手摘みによる収穫、
そしてとことん選果をすることが重要。
ワインがテロワールを表現しているのかというよりも、
造り手として妥協せず情熱と時間をかけ、
そしてそれが品質として表れているのかという点を
評価してほしい。 後何回醸造ができるか分からないが、
必ずや偉大なサンジョヴェーゼを醸造してみせる」と意気込む。
キュヴェ名とエチケットについて
ワイン名の「LUNA(ルーナ;月)」は 2020 年晩秋、
ファースト・ヴィンテッジの収穫を見届け亡くなった、
及川家の愛猫の名前。他ワイナリーで働いた後、
独立開業のための物件探しが難航し、
諦めて日本に帰国することを考えていた及川氏。
だが、出会った時には既に18歳を超えていた
老猫ルーナを飛行機に乗せて
日本へ連れ帰ることは難しく、
ルーナと一緒にいられるうちは
諦めずに探し続けようと心に決め、その結果、
イタリアでワイン造りを続けている今がある。
ルーナの存在なしにワインを
造ることはできていなかった、
と及川氏は語る。
今は亡き愛猫ルーナを、
切り絵作家でイラストレーターでもある
作家 naolee (ナオリー)氏に、
切り絵で表現してもらい、
アートディレクターである及川氏・夫人が
エチケットをデザインした。
ルーナのエチケットを見れば、
今後も直面するであろう
さまざまな困難を前にしても
頑張れるはずだと、及川氏は話す。
折りたたむ