彼とマチューは、100年ほど前から
森になっていた土地を2019年に開墾し、
東から南へ曲線を描くように広がる
美しい緩やかなテラス型の畑を作り上げます。
この畑は標高約700mに位置し、
辺りに人の気配はあまり感じられず、
大自然の中で葡萄の木が伸び伸びと
育つことの出来る素晴らしい環境にあります。
しかし土壌は主に花崗岩と砂質が混ざった形で
構成され保水性が乏しいため、
近年急激に進行している気候変動に
対応することが難しい弱点もあります。
この対策として、南向きの区画には暑さに強い
シラーとルーサンヌ、その他4品種は
全て東向きの区画に植え、
近年の気候に適応できる品種を
適切な斜面の向きに植えて栽培する形を採用しています。
「僕たちは好条件の元でこの畑を作ることができたが、
土壌が非常に痩せているため収穫量は期待できない。
その代わりに凝縮感と冷涼感が強いワインを
造れる環境にあると思う。」とポールは話します。
この様に一度はワイン造りの文化が
無くなってしまったエリアで
再びゼロからドメーヌを興し、
ナチュラルワインを造る素晴らしいプロジェクトを
実現させた二人の努力は将来大きく報われる事でしょう。
ポールは普段は気さくで明るいですが、
畑やセラーにいる彼を観察していると、
常に頭の奥底で何か深く考えている様子が伺えます。
ワインにはこの地のテロワールと畑の特徴が
ダイレクトに反映されるよう丹精込めて畑作業に徹し、
葡萄を完熟した状態で摘みます。
その後は十分な時間をかけてワインを造り上げ、
できるだけ整った良い状態でワインをリリースします。
ドメーヌ名のCoteau Libreは
「自由な丘」という意味で、
サン・プリヴァ・ドゥ・ドラゴン村が
フランス革命後に自ら名付けた名前だそうです。
この名前には、葡萄栽培において以前から
存在する偏見や伝統、定められた規則などから
自らを解き放ち、自身の手を始め本能や感性、
考察などにより育てられた葡萄で
ワインを造りたいという願いが込められています。
折りたたむ