その研修先こそフリウリ、いやイタリアの代表する
偉大なる白ワインの造り手
「Josko Gravnerヨスコ グラヴネル」の
カンティーナでした。
研修期間が終わった後も、そのままヨスコの元で
10年以上畑とカンティーナで働いたアンジェ。
「ワインを造る上で重要なモノ、
唯一の事はすべてヨスコの元で経験してきた。」、
そう屈託のない笑顔で語るアンジェ。
自宅の近くにある高樹齢のブドウ畑を2018年より借り、
ブドウ栽培、醸造を開始します。
畑は自宅からすぐ近くの約2ha、
樹齢は基本的に古く40年以上のものがほとんど。
一部の区画はビリャーナで一番古い58年という
リボッラ・ジャッラも残っている畑。
土壌は強烈なポンカ(Ponca:堆積岩が風化した土壌)に
覆われており、強いミネラルはもちろん、
崩れやすい岩石の間にブドウ樹の根が深く伸び、
保水性も非常に高い土壌。
樹齢の古い畑は、グイヨーやコルドーネ・スペロナート、
広い間隔で植えられており、
地表より1mほどの高い仕立て。
「この10年で気候も大きく変わった。
最近の夏の暑さだと、地表に近いと
地面からの熱の影響を受けやすく、
必要以上に過熟になりやすい。
古くから行われてきた高い、間隔のあいた仕立ては、
空気の通りが良く熱がこもりにくい、
湿度も抜け病気になる確率も下がり、
ブドウ樹の完熟までに十分に
時間を費やすことが出来る」、
そう考えているアンジェ。
そして、彼のもっとも特出すべき点でもある、
1本の樹から徹底的に収穫量を抑え、
樹上での凝縮と完熟を追求。
樹1つあたり4~6房、
500g~700gという驚異的な低収量。
グリーンハーヴェストで全体の70%程度を
落とすという徹底的な収量制限には驚愕の一言。
「樹に残るより落とすブドウの方が多いもんだから、
近所の農家から
『アイツ頭おかしくなったんじゃないか』、って
よく言われるよ、、」、そう笑うアンジェ。
表土は基本的にほとんど手を加えない。
樹齢が古くバランスがとれている事、
ブドウ樹の仕立てが高い事もあり、
雑草が樹の生育に与える影響は少ないと考えます。
非常に恵まれたポンカに埋め尽くされた土壌に、
50年以上の古いブドウ樹、
近代的な仕立てではなく伝統的ともいえる土地に
見合った仕立て。
そして、そこからさらに目を疑うような
激しい収量制限と、
果皮・種子の完熟だけでは足りない、
その先の「超凝縮」、とでもいうような樹上での完成。
種子まで完熟し茶色く色づいた種子、
「収穫前の粒を割ると、果汁がまるで蜂蜜のような
粘性を持っているんだ」、
そう笑う彼の自然体過ぎるこだわり。
ワイン造りを始めたきっかけから、畑との向き合い方、
そしてワイン造りまで。
ヨスコ・グラヴネルという偉大なる造り手で
構築されたアンジェのフィロソフィ。
醸造については非常にシンプル。
収穫したブドウを除梗し開放桶の中で
4~5週間のマセレーション(果皮浸漬)を行いながら
アルコール醗酵を終えます。
醗酵が終わり、果皮が液面から沈むのを待ちます。
手動のトルキオ(バスケットプレス)にて圧搾し、
木樽に移し24ヶ月の熟成を行います。
強烈に凝縮したモストは非常に糖度が高いこともあり、
非常に緩やかに醗酵が続きます。
アルコール度数も15%を
軽く越えるヴィンテージが多く、
2020のフリウラーノは16%にも迫るほど。
しかし、「アルコール度数が高いだけではない、
それ以外の要素も同様、
いやそれ以上に凝縮しているからこそ
アルコリックに感じない」、そう考えている彼。
カンティーナの設備や生産量の問題もあり、
現在約2年間の樽熟成。
素材のポテンシャルを鑑みれば、
将来的にはもっと長い時間を費やすことも考えています。
しかし、現時点でリリースされている
アンジェのワインに対して、
何か「足りない」と思わされるものは全く感じない、
そう本心で思える味わい。
ヴォリューム感や余韻、果実はもちろんですが、
ボトルの中の液体の密度、情報量の多さ。
美味しいという言葉だけでは全く足りない、
そう自覚してしまうほどの圧倒的な味わい。
ボトル詰めを始めたのは 2018年から。
生産量は僅か3000~4000本には満たない量。
収量制限の話を考えれば、
仕方のない生産量だとご理解いただけると思います。
これほどの若さで凄まじいクオリティ、
可能性を持っていることは間違いありません。
そして、それ以上に彼と話している中で、
完璧というベクトルとは違う、
彼自身の愉しみや喜びに満ち溢れている
ワインであると痛感します。
凄さや偉大さだけではない、人間的な柔らかさと情熱。
彼は今後間違いなく成長していく、
その先に見えるアンジェのワインが、
いったいどれほどの存在を放つのか。
期待以上に鳥肌が立つような感覚に襲われます。
フリウリ、スロヴェニアという枠を超えて
表現しきる「Brdaブルダ=Collioコッリオ」の
ポテンシャル。
これから先の時代を担うアンジェの可能性。
間違いなく覚えていただきたい原石のような造り手です!
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