コントラーダと呼ばれるこの小さな土地は、
代々家庭用として野菜やオリーブ、ブドウを栽培。
今まで一切の薬剤や肥料を使わずに守ってきた土地。
彼自身、幼い頃からこの畑で野菜やブドウの栽培に携わったことは、
彼の一貫したフィロソフィを形成したといってもいい。
標高が高く(300m)北向きの斜面は、
一見ブドウの栽培に不向きのように思える。
しかし、シチリアの強すぎる日差しと高温から適度に果実を守り、
メッシーナ海峡より吹き続ける北からの潮風は、果実に十分な酸と骨格を、
そして南にある手つかずの山は、地域特有の南風シロッコ(アフリカ大陸から
海を越えてやってくる、砂と水分を含んだ熱風。
シチリアの農作物に多大な被害を与えることで有名)から、
自然の盾として「Bonavita」を守り続けている。
(ジョバンニはこの山のもたらす多くの恩恵、
流れ出る湿度を持った冷気、手つかずの生物環境、
自然環境こそブドウの栽培にとって不可欠な物と考えている。)
栽培されるブドウはネレッロ マスカレーゼ、ネレッロ カプッチョ、
ノチェッラと呼ばれる地域特有の品種、このノチェッラの強い個性
(酸が強く果皮の色素が薄い)こそがファーロの個性といっても過言ではない。
彼はこのボナヴィータ:(1ha 標高280m。古いものは樹齢55年にもなる。
石灰質、粘土、部分的に砂の多いトゥーフォ土壌)と、
2006年より自ら切り開いたMangiavaccheマンジャヴァッケ:
(1ha 標高320m。粘土、石灰が強いのが特徴。2011年より収穫、醸造)の
2つの畑より6000本の生産。
醸造は自宅の地下室を改造した小さなカンティーナで行う。
果実は一部除梗せず、開放桶で2週間のマセレーション(果皮浸漬)を行い、
自然酵母による醗酵を促す。
日々の攪拌を行いつつ木樽にて12か月、ボトル詰め後6か月の熟成。
ロザートは約半日(12時間)のマセレーションを行い、
果皮に着く野生酵母による醗酵を促す。
通常造られるロザートよりもしっかりと抽出されたタンニンとアントシアニンは、
不安定といわれるロザートの醗酵・熟成を非常に安定させ、
SO2の添加を全く必要としない。ボトル詰めの段階にてごく少量使用するのみ。
すべての行為(栽培・醸造すべてを通して)に明確な必要性がある。
反対を言えば必要のない行為(薬品の添加や、醸造的な技術介入)を
いかに排除していくのか、そこにジョバンニの考えるワイン造りが見えてくる。
果実の素晴らしさを失うことのない彼のワインには、
本来の果実や香りを失うことなく感じる。
そして醸造・熟成によって更なる味わいをもたらしてくれる。
ワイン造りへの誠実さ、穏やかな意思表現を持ちつつ、
自身の実践と考察から生まれる、確固たる自信を内に秘めるジョバンニ。
彼の目指すメッシーナのワイン造りの背景には、
祖父、父が味わってきたこの土地のワインがはっきりと描かれている。
ファーロのワイン造りを現在に継承しつつ、自己のワイン造りを突き詰めていく。
エヴィーノさんの資料より
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