【畑と栽培について】
森林農業とも呼ばれるアグロフォレストリーという考えが
ブドウ栽培の根底にあります。
モノカルチャーに対するポリカルチャーと
言い換えても良いのかもしれませんが、
ブドウ以外の果樹や樹木(アプリコット、桃、プルーン、
リンゴ、洋ナシ、カリン、マルメロ、
チェリー、クマシデ、カエデ、菩提樹など)を
ブドウ畑内に植え付け、
秋から春の間には鶏や羊を畑内に放し、
植物相と動物相の相互作用により畑の継続的な
エコサイクルの確立を目指しています。
夏季選定は行わず、ブドウのツタ同士を編むように絡めます。
刃物 でツタを切り落としたりしなければ、
ブドウは自分を守る必要もないので、
実をみのらせることのみに集中できるからだと
ステファンはいいます。
またレ・デュレ・ル・ムティエのような一部の区画では、
銅や硫黄は 一切使用せず、植物の煎じ薬とハチミツ、
乳清のみでの畑の管理を行っており、
将来的にすべての区画で可能なことなのかどうか、
思案中 だそうです。
畑はモンターニュ・ド・ランスのメルフィ―村と
シャムリ―の 1 級畑を所有しており、
2019年よりデ メター認証を取得。
ビオディナミ農法を行うことは、
各ヴィンテッジや各テロワールを尊重する手段であ るとともに、
“ブドウ樹が野性に戻るための最初の一歩”と考えています。
【セラーと醸造について】
セラーでは亜硫酸をはじめとする化学的な添加物は使用せず、
フィルターもおこないません。
ワインの繊細なアロマを最大限保つためには、
ワインには重力以外の力をかけるべきではないという考えに基づき、
ポンプも使用せず、醸造所の設計も、
重力の働きを最大限に取り入れられるように
3階建てに設計されています。
◆リキュール・ド・ティラージュについて
シャンパーニュ・パルマンティエではティラージュも
自家製のブドウ果汁で行っています。
伝統的にティラージュの際に用いる“選別酵母”と
砂糖と水を用いれば、失敗なく“計画的に”瓶内二次発酵により、
シャンパーニュの泡を造りだすことはできます。
しかし彼らは自分たちの畑で採れた翌年のブドウの果汁を用い、
野生酵母の力によってシャンパーニュの
泡を造り出すことを2019VT から選択しました。
生産初年度の2016VT から2018VTは“伝統的な”ティラージュ。
しかし2019VTからは一部のシャン パーニュで実験的に、
2020VT からは生産する全てのシャンパーニュにおいて、
自分たちのブドウ果汁を 用いてティラージュを行っています。
例えば2022VTの収穫は2週間ほどでしたが、
収穫期の最後の一番成熟したブドウを、
ティラージュ用の果汁として収穫します。
そしてそのブドウ果汁の発酵が始まる前に、
2021VT の醗酵の終わったワインとブレンドして瓶詰めし、
瓶内二次発酵を行います。
その際の2021VTと2022VT(ティラージュ用果汁) の割合は5:1ほど。
つまり収穫量が果汁換算で2021VTが10hlあったとすると、
2022VT 2hl 必要になります。
そして問題はティラージュ用果汁によって
増えた2hl分のワインは蒸留所で蒸留しないといけません。
なぜならシャンパーニュ地方では収穫量と
販売量の管理が厳しく行われており、
2021VTの収穫時の申請が10hlであった場合、
それ以上の量のシャンパーニュを2021VTとして
リリースしてはいけないからです。
法的制約もあり、醸造的にも非常に
リスクの高い手法ではありますが、
ステファンは以下のように考え ています。
「市販のリキュール・ド・ティラージュを使う方が、
安全に瓶内二次発酵が進むことは分かっている。
しかしティラージュを自分たちの果汁で行った挙句、
蒸留所へ送ることがあったとしても、
僕は自分のブド ウの果汁で
ティラージュを行うことを選択したい。
けれど僕にはこの“自然な”製法をしているということが必要で、
ティラージュ用の砂糖や水をスーパーマーケットで購入したり、
スペインやイタリアで製造される
リキュール・ド・ティラージュを使いたくない。
使いたくないんだ。」
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