多くのワインがピュアな自然派ワインの手法で
醸造されながら、質感や香味は非常に安定しており
還元的なニュアンスもあまり見られません。研修などを経て地元に戻った彼は、
ブドウ栽培農家であった父親のいくらかの畑を引き継ぎ、
組合にブドウを売る生活を始めます。
その中でも、荒れた土地であった山間の畑を
自らの手で開墾するなど栽培面積を広げていきます。
自然派ワインの元詰めをめざしつつも、
安定的に蔵の経営を行うためにも様々な可能性を模索します。
自分の力で美味しい自然派ワインが造れるだろうか、そんな不安をも抱えつつ、
2006年に組合から独立を果たし、ドメーヌ元詰めを開始します。
師事した二人の生産者もこの地の先鋭的存在ですが、
ジェローム ジュレのワインからは、
その二者とは異なる透明感、慎重さ、安定感、
芯の強さ、優しさが備わっています。
カリニャン、アリカンテ、シラー、グルナッシュ、メルロ、
カベルネソーヴィニヨン、ユニブラン、ヴィオニエ、シャルドネなどなど
様々な品種を栽培し、そのそれぞれでアルデッシュの常識を覆す
高品質なワインを生み出し続けています。
初ヴィンテージの2006年では、自然派ワインの手法で造ったのは
「パ・サ・パ(一歩一歩慎重に)」と「アン・ナヴァン・ドゥ・トゥ
(迷う前に迷ってないで)」の2キュヴェのみですが、
とあるサロンでこれらのワインに出会った時にはすでに、
「偉大さ」とは違うベクトルの
「きらりと光るセンスの良さ」を備えており将来性をひしひしと感じました。
2年目、3年目と経験を重ねるにつれ、
伝統的手法で生産されていた他のキュヴェや
品種のワインも自然酵母、ノンフィルタで造るようになり、
そのラインナップはどんどんと広がっています。
どのワインもテロワールだけ見れば決して恵まれた条件ではありませんが、
丁寧に丁寧に、家を建てるのと同様の素晴らしいクリエイティビティで、
魅力溢れる飲み心地のよいワインを造っています。
ある時、ジェロームに個人的に好きな生産者を尋ねてみました。
何事にも真摯な彼は、少し悩みつつ・・・
「ラングロールかな。」
確かに、ラングロールになめらかな果実味と飲み心地は、
彼のワインに通じる美点で納得させられます。
今後経験を重ねることで、より洗練されたスムーズなワインへと
進化していくことが期待されます。
野村ユニソンさんんの資料より
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