事実、農業会社の営業マンが無理やり私に聞かせたつまらない話が、
私にとって気に入らないものだとすぐに気付き、自問自答したしまつだ。
自然は、これらのものを本当に必要としているのだろうか?と。
それからあとになって、70年代の終わりころ、私のやっていることは
ビオロジック農法だと誰かに言われた。それまで、自分では気づいていなかったのだ。
公式的には1981年から認証を受ける先駆者ということになる。
近頃は、ビオロジックということばを耳にする機会が多すぎる。
やや流行的に使われているが、商業上必要でうたっている場合が多いね。
自分の手で植樹し、心をこめて育て上げてきた美しいブドウ畑からは、
かぐわしく厳格なキャンティ・コッリ・セネージが生まれる。
品種構成はサンジョヴェーゼ86%、カナイオーロ10%、コロリーノ3%、
トレッビアーノ/マルヴァジーア計1%(白ブドウ)だ。
ファースト・ボトリングはいまや神話的な1979年。
このワインがうまれる土地は地質学的に比類ないユニークなもので、
「フェノメノ・コッラルト」と呼ばれる。石灰岩の層と火山性の隆起した層が並んだものだ。
じゅうたんのような、いずれ他にはない腐葉土のモケットとなるように、
私は刈った草をブドウ樹の足元にまくという作業を繰り返す。
少しでもブドウ樹が楽な生活が送れるようにと思ってのことだが、
それでも表土にはブドウの根は極めて少なく、ブドウは忍耐を強いられる。
私はつねに驚くほど美しいブドウをカンティーナに運び込む。
腐敗をいうものを知らないし、ワイン醸造はごくごく簡単だ。勝手にワインになる。
主義として、酵母添加は行わず、土着の天然酵母のみで醗酵が進む。
そして、私はステンレススチールタンクを愛しているわけではない。
コンクリート槽の伝統を愛しんでいる。昔は木樽も用いていたが、
ビステッカを調理するために犠牲になってもらった。
ブドウ由来の見事なまでのタンニンが備わっているため、木樽は必要ない。
最終的にはゆっくり、非常にゆっくりとボトルの中で熟成していく。
そう、銀色に輝くオリーヴのことも忘れてはならない。
トスカーナの象徴かつ栄光であるオリーヴから、
繊細なエキストラヴァージン・オリーヴオイルができる。
『イル・カザーレ』の畑は、シエナの山々に囲まれている。
昔ながらのブドウの栽培醸造の伝統があるこのエトルリアの大地で、
ブドウ樹は愛情をこめて栽培され、キャンティ・コッリ・セネージになるべく醸造される
高貴なブドウを実らせる。このワインは輝きのあるルビーレッド・カラーで、
繊細な芳香、スミレのアロマがあって余韻が長く、
ひろく食事とともに楽しまれるべきワイン。地中海の料理との相性がいい。
リゼルヴァは、暗めのルビーレッド・カラー。ドライフルーツや御香のかおりがあり、
たっぷりとしていて優美だ。アルコール感もあるが余韻は長い。
偉大な料理のためのワインである。キャンティ・コッリ・セネージは収穫から3~4年後に、
リゼルヴァは5~7年後にボトリングされる。
一方、Giovannino(ジョヴァンニーノ、つまり小さなジョヴァンニの意)は
若者たち向けの、 若くして楽しめるワイン。フレッシュで愉快で、飲みやすい。
最後に、Rubro del Casaleルブロ・デル・カザーレ。ファースト・ヴィンテッジは1994年。
サンジョヴェーゼ100%でつくられ、毎年リリースされるわけではない。
格付けはテーブルワインでありながら、ボトリングは収穫から7年後になることもある。
濃いルビーレッド・カラー。堅牢なタンニンが豊富で、味わいには、
好ましいアイリスの風味がある。熟成にむくワインで、ジビエとあわせるのが理想的だ。
みなは『あなたのキャンティ・コッリ・セネージは非常によく熟成しますね』と
言うけれど…。
『1600年代から存在しているような自身のカンティーナを持っていて、
キャンティからの白ブドウの排除に常に異議を唱え続けているような
トスカーナ出身の誠実な栽培家がいる。わたしのワインに限らず、
そういった栽培家が伝統にのっとってつくった多くのキャンティ・コッリ・セネージは、
とてつもない熟成可能性を秘めているのだ。
しばしば、私は過去を体験することを楽しんでいる。
並外れたタンニンによってまだフレッシュさが保たれていながら、
なめし皮を感じさせるステージにあがり、そこから赤い果実がゆっくりと姿を現してくる。
そんなワインを味わうのは計り知れない喜びだ、と確信を持って言える。』
ジャンニは、常に真実の品質とは何かを探り続けた。彼は熟成したワインが大好きだ。
会いに行ってごらんなさい、いつでも、驚嘆すること間違いなし。
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